2024年 4月の星空を撮る








はくちょう座の散光星雲


中央の恒星ははくちょう座の1等星デネブ。わし座のアルタイル、こと座のベガとともに夏の大三角を構成する。写真の右上にあるのは2等星のサドル。デネブが青白い輝きを放っているのに対してサドルはやや黄色がかっている

デネブの下には北アメリカ星雲が、その隣にはペリカン星雲がある。北アメリカ星雲はイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見された。この2つの散光星雲は実際には1つのものであるという。水素が電離するときに発する、赤色に近い光を放っているが、肉眼ではほぼ識別はできない


----------------------------------------------------

180mm、ISO1600、f2.8、360秒(60秒×6枚)、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはoff、ダーク減算後加算コンポジット処理、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7M3(改) + TAMRON
70-180mm F/2.8 Di III VXD

赤道儀 AP
スライド雲台プレートDD + カウンターウェイト 1.9㎏

2024年4月10日02時35分








見参! 夏の天の川


春は霞や黄砂、花粉がいっぱい飛ぶので澄んだ星空は期待できないことが多い
しかしこの日は、昨夜からの大雨と夕方までの強風が吹き荒れ、空に掃除機をかけたように素晴らしい星空が広がった。おまけにこの夜は新月

冬のオリオン座との邂逅は心ときめくが、同じように初夏の天の川もまた季節の巡りに感謝する気持ちになる。今年の4月こと座流星群は一晩中の月明かりに照らされるので、期待できない。もし新月期なら上の写真のこと座のベガ付近を放射点として流星が流れることになる。しかも、時々突発出現するので油断できないが、なんせ今年はダメ

一足早く夏の天の川を撮った。山あいは霞があってよどんでいるが、天の川はまずまずの姿を見せた。私が透明度を確認する目安としている、いるか座も識別できる
ただしこの時期は明け方近くにならないと天の川の高度が上がらない。しかも明け方近くになると無数の人工衛星の光跡がより目立つようになる。上の写真の光跡も流星ではなく、人工衛星。本当ならσクリッピング加算平均処理で光跡を除去したいところ
この撮影に使用した赤道儀はサイトロンのNewナノトラッカーⅡで、コンパスで簡易的に極軸を合わせたもの。なかなかどうして、ポータブル星野赤道儀として十分な追尾性能。広角~超広角レンズを使用して、手軽に追尾撮影できることが気に入って愛用している

----------------------------------------------------

14mm、ISO1000、f2.0、40秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年4月10日02時36分






豪雨と突風が過ぎ去った後に 桜と満天の星



大雨と突風が過ぎ去った後、新月の快晴の星空となった。ソメイヨシノの多くは散り、強風が避けられた木々が花を残すのみとなった
施設の街灯も光が落ち、ここ山中はほとんど星明かりだけの闇夜。ときおり吹く強風も次第に収まり、眼の暗順応が進むにつれて桜の花が鮮やかさを増していった

西天に残っていた冬の星座は山際に没し、春の星座も西へと消えようとしている
桜の樹間に青白く光るのはしし座のレグルス


----------------------------------------------------

14mm、ISO6400、f2.0、20秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚で固定撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年4月10日00時23分






星の明るさ と 数学の関係 について 考える

こと座の1等星ベガから星の明るさを考える


ベガはこと座のα星。織女星・織り姫星としておなじみの星である
小学校4年理科で夏の大三角を学ぶときに教科書にも登場する

のっけから余談で恐縮だが、私の姪っ子がシドニー工科大学に留学していた時期があった。そこで北半球とは季節が反対になる南半球のオーストラリアの子どもたちは「夏の大三角」は「冬の大三角」いう名で勉強しているのだろうかと、疑問に思ったことがある。オーストラリアには教科書検定制度はないはずだから、州ごとに指導内容が決められているだろうけれど。聞いてもらうと、オーストラリアの学校では星空の勉強はしない、余程の進学校なら勉強するだろうけれど、ということだった。私は未だに信じられずにいる

さて春になって東天にベガが顔を出す季節になった。20世紀後半までベガは星の明るさの基準として使われていた
太陽を除くと地球の北半球から見て夜空で一番明るい恒星は、おおいぬ座のシリウス。中国では天狼星と呼ばれ、シリウスだけで1つの星座とされている。シリウスはこれも小学校4年の理科で冬の大三角として学ぶ。シリウスの次に明るいのは、りゅうこつ座のカノープスだが、南半球から容易に見られるカノープスも原理的には北緯37度18分が北限。カノープスは日本の平安時代などには南極老人星と呼んで、これが出現すると瑞兆とされた。次がうしかい座のアルクトゥールスで、ベガの明るさはそれに次ぐ

ベガの見かけの等級はおおよそ0(正確には+0.026)。今日でも恒星等級尺度のゼロ点として一般的に使われている

     ○

【星の明るさと数学 のお話】

紀元前150年頃のギリシャの天文学者ヒッパルコスは、最も明るく見える星を20個選び出し、これらを1等星とした。一方肉眼でぎりぎり見える暗い星を選び、それらを6等星とした。これが今日まで続く星の明るさを表すことの始まりである
現在では1等星の明るさは6等星の100倍であることがわかっている
しかし問題がある。明るさが 1等星>6等星 であったとしても、6等星の明るさの6倍が1等星というわけではない。星の明るさは1等級上がると2.5倍明るくなると言われるが、この2.5倍という数はどのようにして求められるのだろうか

「6等星の明るさをn倍すると5等星の明るさになる」とすると、以下のような関係が考えられる

6等星 →(n倍)→ 5等星
5等星 →(n倍)→ 4等星
4等星 →(n倍)→ 3等星
3等星 →(n倍)→ 2等星
2等星 →(n倍)→ 1等星

1等星の明るさが6等星の明るさの100倍であるので、

n×n×n×n×n = nの5乗 = 100 であるといえる



以上によって、星の明るさが1等級上がると およそ2.5倍明るくなる ことがわかる






冬から春へ と 星は巡る - 揖斐谷 -



冬から春へ と 星は巡る-揖斐谷-


ここは北天から西天は街明かりの影響も少なくて、山際の樹林さえなければ、と贅沢な望みを持ってしまう

写真の中央やや右に北斗七星。そこからたどって右下にある北極星に容易に気づくことができる
北斗七星の左には ししの大鎌 。よく見ると「?」マークを裏返しにして横倒しになったような形をしている。下の樹林に隠れようとしているのがふたご座のカストルとポルックス。隠れ始めている青白い恒星がカストル、それよりやや明るくて少し赤味がかかっている恒星がポルックス
ししの大鎌とポルックスの間には かに座 の宝石箱と呼ばれるプレセペ星団が姿を見せている

冬の星座は西へ沈み、天頂から西にかけての夜空の主役は春の星座


----------------------------------------------------

14mm、ISO800、f2.0、40秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年4月01日23時21分








ベガの登場 -揖斐谷-


台風かと思うような突風が吹き荒れた後、夜になって風が止んだ。木々の枝をへし折らんばかりの強風には閉口したが、おかげで黄砂も春霞も、掃除機をかけたように消え去った。まもなく月出の時刻。この夜の月は下弦だから、下弦を過ぎれば星空の観望はずっと条件はよくなる

私にとって、春を告げるとともに初夏の訪れを告げる1等星はうしかい座のアルクトゥールスである。上の写真では上辺の中央からやや右に見えている。春の大曲線を構成する1等星だが、春の大型連休に入る頃の深夜に南中する。そして「金生山姫螢」観察会・写真教室の頃にはアルクトゥールスは西南西へと傾く。代わってこと座の1等星ベガが高度を上げ、ヒメボタルの発光活動が終わる頃にはベガは天頂に達する。ヒメボタルの季節の終わりを告げ、夏の到来を知らせてくれる1等星は、私にはこと座のベガ以外にはない

4月にはいったばかりのこの夜、0時を回ろうとする頃に東天にベガが山際から顔を出した。青白く輝くこと座の1等星ベガと、赤っぽく輝くうしかい座の1等星アルクトールス、共に輝く夜空は見ていて楽しい。アルクトゥールスが赤っぽい色で輝くのは表面温度が約4,000Kと比較的低いのに対して、青白く輝くベガの表面温度は9,300Kと高いことによる
上の写真の左端には北極星が写っている。北極星は当たり前のように北の方角を知らせる星として輝いているが、約12,000年後にはベガが北極星の位置にくる。これは地球の歳差運動によるもので、約12,000年前の縄文時代草創期の縄文人たちは北極星の位置に輝くベガを見ていたかもしれない、ということになる。12,000年後に見てみたいものだが、これは叶わぬことではある


----------------------------------------------------

14mm、ISO800、f2.0、40秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年4月02日00時10分